宝石のはなし


1.ダイアモンドの選び方

たとえば婚約指輪にダイアモンド買おうということになった時、いったいどうやって選べばいいのか
よくわからないことのほうが多いでしょう。結婚情報誌やネット上でも基礎的な知識は仕入れること
は出来るでしょうが、それでダイアモンドをほんとに理解して買っているでしょうか?

まず、本題に入る前にダイアモンドとダイヤモンドどちらが正しいのでしょう。
専門的な本でもダイアモンドとかかれているものと、ダイヤモンドとかかれているものがあります。
広辞苑では、第2版ではダイアモンドですが最近の版ではダイヤモンドとかかれています。
まあどちらでも意味が通じればいいとお思いの方もおられるでしょうが、とりあえずダイアモンドは英語ではdiamondで
すからダイアモンドのほうが発音的には近いと言えそうですね。国際化時代と言われて久しいですが、こういうことは明
治時代のほうが発音に近いカタカナが使われていたのじゃないでしょうか。とにかく私はダイアモンド派です。

4C

ダイアモンドを科学的に評価しようとしたのが4Cによるグレーディングです。
4Cですべてが評価できるわけではありませんが、ある程度客観的な評価ができるシステムです。
4Cについてはさまざまな本やネット上でも説明を見る機会があると思いますが、ここでも簡単におさらいしましょう。
簡単にと言うのは詳しくやるとそれだけで数百ページになり「選び方」までたどりつかない恐れがありますので。
グレーディングにはいくつかの方式がありますが、ここではGIA方式に基づいて説明します。

Colour カラー
ダイアモンドのカラーは無色のDから徐々に黄色みを帯びてゆきE・F・G〜Zの23段階で表されます。これをイエロー・
スケールといいますが、このほかにファンシー・カラーと呼ばれるピンク、ブルーはじめレッド、グリーン、ブラウン、ブラッ
クなどがあります。

Clarity クラリティー
透明度といわれています。ダイアモンドには多くの場合微細なあるいは大きな内包物(インクルージョン)が含まれています。
これはダイアモンドとしては不純物と言えるわけですが、これも天然特徴です。
その内包物の少ないものほど透明度が高いとされ、高いものから順に、FL(フローレス)、IF(インターナルフローレス)、
VVS、VVS、VS、VS、SI、SI、I、I、Iと呼ばれています。
表1

Cut カット
4Cで言うカットとはシェイプ(形状)ではなくプロポーションと仕上げ(あるいは完成度)のことです。
良いカットとはダイアモンド本来の輝きを十分に引き出させるカットのことで、逆にカットが悪いと輝きのない魅力のない
ダイアモンドとなってしまいます。
カットの評価については以前は総合評価を鑑定書に記載せず、プロポーションの特徴を数値から読み取るのが一般的
でしたが、現在はEX、VeryGood、Good等と総合評価が記載されています。

Carat カラット
1カラット=0.2g
と言う説明だけでは簡単すぎるでしょうか。いちばん簡単なはずのカラットの説明が詳しくすると結構ややこしいのです。
まず、ダイモンドと表記にこだわってきましたが、これもカラットとでいいのでしょうか・・・英和辞典を引いていただけれ
ばすぐにわかりますが、このCaratの発音は人参のキャロットとおんなじなんです。でも0.5キャロットなんて書いていたら、
「人参が半分」なんて感じがしておかしですよね。しかし口語的には「1キャラ」「0.5キャラ」などのようにキャラといわれ
ることが多いです。
そして一番の誤解はカラットは「重さ」の単位と説明されること、専門書と言っていいほどの本でも「重さ」とかかれている
の見ることがありますが、カラットは「質量」の単位です。重さと質量の違いは物理の説明になるのでここではしませんが、
質量を重さと混同することの方が常識にかなっているように思われているのなら嘆かわしいことです。

予算と品質と大きさ

4Cの説明を簡単にしたところでいよいよ本題の選び方について話を進めていきましょう。
4C すなわちカラー、クラリティー、カット、カラットに基づいてダイアモンドを選ぼうとすると、そうめったに買わない買い物
をするわけですから、やはり品質の良いものを買いたくなりますね、4Cのことを一応知っていればなおさらです。
一番品質の良いものとなればD・FL・EXとなりますから、それを買うのが一番良い買い物だといえます。しかしもうひとつ
のCは品質ではなく大きさ(質量)ですから大きければ大きいほど際限なく高価なものになってしまいます。
よほどの大金持ちは別としてやはりだいたいの予算を決めれば品質の3Cをハイグレードにすればするほど、カラットは当
然小さくなってしまします。
つまり、予算を決めると品質と大きさのバランスの問題ということになってしまいます。
しかし、そうすると、ダイアモンド選びはなんともつまらないことだと思えてきませんか、だってそうでしょう最高級のダイア
モンドは、D・FL・EXとわかったのによほどの予算がない限りかなり小さなダイアモンドしか買えないということになります。
それで、ある程度見栄えのする大きさの物にするため、いずれかのグレードを落として行かなければならない。
つまり、品質と大きさのバランスと言えばまだ聞こえはいいけど要は妥協点を見つけなければいけないということになります。
世の中ダイアモンドに限らずすべてそういうものだといってしまえばそうかも知れません。品質が良くて大きなものは高くて
当然です。そのことはダイアモンドの場合まったく否定できません。
しかし、なぜこういうあまり楽しくない選び方(気持ちの持ちようでこれでも十分買い物を楽しめるでしょうが)が普通にされて
いるのでしょうか。それは最初に言ったように4Cはダイアモンドを科学的に評価しようとするシステムだからです。つまり4C
はダイアモンドを選ぶために考えられたものではないということです。
4Cは科学的ゆえにそのスケールは当然上限から下限まで定められています。ところが実際には最高グレードのものはもち
ろん存在はしますが、その数は極めて極めて稀です。

ダイアモンドの美しさとは
そこで、少し考え方を変えて、ダイアモンドの宝石としての魅力・価値とは何なのかということを考えると、宝石には三要件と
いう物があります。

・限りなく美しいこと
・希少性があること
・耐久性があること

この三つがなければなりませんが、ダイアモンドははそれを高いレベルで満たしているといえます。
そして,ダイアモンドの美しさはというとその輝きにこそあります。
ダイアモンドの輝きはその内面から反射する光の多さ、表面の輝きの美しさ、虹色に輝く分散光の美しさからなっていますが、
そのどれもがあまりに小さくては十分に発揮できません。
つまり視覚的な美しさ、見た目の美しさのためにはある程度の大きさが必要です。
逆に、クラリティとカラーは見た目の美しさを損なわなければそれほど高いグレードである必要はありません。
ただし、クラリティの低いものはそのインクルージョンの種類によっては耐久性に大きな影響を与えるので注意が必要です。
では、カットはどうかと言うと、これは出来うる限り完璧なカットが望まれるべきです。
何故かというと美しい輝きのためには正確なカットがどうしても必要だからです。不正確なカットでは光を十分に反射できない
のです。では、カットはEXでなければいけないのか、あるいはEXなら必ず最高に輝くのかと、言うとそうとも限らない場合もあ
ります。
EXとかVG(VeryGood)とかいうのは総合評価であって、内部反射の良し悪しは総合評価ではなく「パビリオン角度」と言って
ダイアモンドの底面側の角度によって決まるのです。
ということは、パビリオン角度が正確であればカットの総合評価だけにこだわらなくて良いということになり、VGでもG(Good)
でもパビリオン角度が正確であれば、十分な内部反射が得られるということになります。もちろんVGやGはEXに比べて減点
が多いのですからパビリオン角度だけが正確でも表面反射、分散光についてはわかりません。さらに対称性の良いカットは幾
何学的にも美しくこれは通常拡大しないとわからないですが、アローやハートのでるダイアモンドもあるわけです。
では理想的なパビリオン角度はと言うと40度45分あるいはパビリオン深さ43.1%と決まっています。これはトルコウスキー
が計算したカットでこの角度であればダイアモンドの上面から入った光はパビリオン(底面側)で反射され100パーセント上面
に帰ってくるわけです。

ではいったいどのグレードを選ぶのか

具体的にグレードを挙げてみることにしましょう。
たとえば婚約指輪でルース(石だけ)で30万円ぐらいの予算としましょう。(もちろん実際の予算は通常指輪全体ですが)
いずれのカットグレードでもパビリオン角度はほぼ理想に近いものと言う前提ですが
カラー:
クラリティー:VS
カット:VeryGood
カラット:0.5ct
ぐらいでどうでしょう。なかなかバランスが取れていると思います。
このあたりのグレードを中心に、
G・VS・EX・0.5ct あるいはG・VS・VG・0.6ct、 G・SI・VG・0.7ctなどもよいでしょう。
D・VS・EX・0.4ctという手もあります。
ただしクラリティSIくらいになると同じグレードでも良いものと悪いものとでかなり幅があります。つまりSIでもSIに近いも
のとIに近いものとでは1グレード弱=0.9グレードくらいの差があるといえます。しかし4Cによるとそれは同じグレードで同
じ価格になるわけです。だったら同じグレードでも少しでもいいものを選んだほうが得と言うことになります。
また、SIの場合耐久性に影響のあるインクルージョンがある場合もあります。その場合落としたときなど大きな衝撃を与える
と割れてしまうことがあります。ただそういうインクルージョンでない石ならSIでもまったく悪いことはありません。
ところで30万円でD・FL・EXという最高グレードのダイアモンドをさがすと、いったい何キャラットぐらいのものがあるでしょうか。
残念ながら手もとの表には該当するものがありませんが、D・VVS・EXの約2倍と考えると0.2ct程度となるでしょう。
もちろんたとえ小さくても最高グレードという満足感は捨てがたいものかもしれませんが、身に着けたときの美しさは二倍以上
のボリュームのある石にはかなわないとおもわれます。


やっと具体的なグレード選びの話になってきましたが、まだまだ話し足りないことがいっぱいありますので続きは次回以降にい
たします。


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